抗てんかん薬フィコンパ、国内でALSに対する医師主導型臨床試験を予定

国際医療福祉大学 臨床医学研究センター 郭伸特任教授と東京大学大学院医学系研究科 赤松恵特任研究員らの研究グループが2016年6月28日オンライン版「Scientific Reports」で発表した研究成果(※1)を受け、ALSに対するフィコンパ(一般名:ペランパネル水和物、エーザイ株式会社)の医師主導型臨床試験の準備が現在進められている。発表された研究内容は、既存の抗てんかん物質であるペランパネルが、ALSモデルマウスにて神経細胞死を抑制したというもの。

治験は孤発性ALS患者限定となり、全国の大学病院を中心に10施設程度で行う予定で、対象患者数は60名程度となる。開始時期については、順調に進んだ場合は2017年初を見込んでいる。治験への参加基準等は、これまで実施されてきたALS患者を対象とした治験での基準等とほぼ同様になる予定である。

郭伸特任教授らの研究グループによるこれまでの研究で、ALSでは神経伝達に関わるグルタミン酸受容体の一種であるAMPA(α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid)型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)の異常が運動ニューロン死の原因となる、と確認されていた。具体的には、AMPA受容体のカルシウム透過性に重要なサブユニットであるGluA2に、本来生ずべきRNA編集が起こらず未編集型GluA2が発現するため、カルシウム透過性が異常に高いAMPA受容体が運動ニューロンに発現する。また、このGluA2での未編集の発生はRNA編集酵素であるADAR2酵素の発現低下が原因であり、さらにADAR2の遺伝子改変マウスの解析から、ADAR2酵素の発現低下は異常なカルシウム透過性AMPA受容体の発現を引き起こすことにより運動ニューロン死の直接の原因となるだけでなく、TDP-43というタンパク質の局在異常を引き起こすことも確認された。このTDP-43の局在異常は孤発性ALSの運動ニューロンで特徴的に発生することが知られていることから、本タンパク質が病因となり得、また有望な治療ターゲットである事が示されていた。

フィコンパはエーザイが創出した新規化合物であるペランパネル水和物を有効成分とする、選択的AMPA受容体拮抗剤であり、グルタミン酸による後シナプスAMPA受容体の活性化を阻害し神経の過興奮を抑制することは、運動ニューロン死を抑制できると考えられている。またすでに抗てんかん薬として国内外で承認されており、人に対する安全性も確認されていることから、ALSの治療薬剤としての今後の開発が期待される。

※1 東京大学プレスリリース 2016年6月29日付
経口AMPA受容体拮抗剤による筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法確立 -孤発性 ALS 分子病態モデルマウスへの長期投与試験―

広告