血液脳関門通過技術が実用化に着手

今回の開発の対象疾患はALSではないが、ALS治療薬開発においても問題となる薬剤を血液脳関門で(Blood-Brain Barrier)通過させる技術が実用化に動いた。

血液脳関門とは、様々な有害物質が脳組織を障害するのを防ぐため、血液から脳内への物質の出入りを制限する機能である。脳の活動のエネルギー源となるアミノ酸・ブドウ糖などは脳内へ輸送されるが、多くの薬剤やタンパク質などの大きな分子は、このバリア機能により脳内に自由に入ることができない。

今回JCRファーマ社は血液脳関門通過に関する技術(J-Brain Cargoと命名)の実用化第一弾として、血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素 JR-141(血液脳関門通過型遺伝子組換えイズロネート-2-スルファターゼ)の開発業務に着手した事を発表した。

JCRファーマ社が独自開発したJ-Brain Cargoは、脳毛細血管の内皮細胞表面に発現している、あるレセプターを介して目的とする物質の脳血液関門通過を実現する技術であり、JCRファーマ社が実施した実験では通常の20~100倍の効率で血液脳関門を通過させることができた。
この技術は、対象となる高分子から低分子までの薬剤に血液脳関門通過能を付与できる画期的な技術であり、静脈内投与で十分量の薬剤が脳内に到達して薬効を発揮するため、これまで改善が期待できなかった中枢神経症状を伴う病態に対し、大きな改善効果が期待される。
従来型のハンター症候群治療酵素にJ-Brain Cargoを適用させたJR-141は、マウスやサルを用いた動物試験で、脳への薬剤移行や中枢神経系障害の改善効果において非常に良好な結果を示しており、JCRファーマ社では、今後、専門医との協議を進めつつ、具体的な開発計画の策定を行い、2016年度内の臨床試験開始を目指す。

今後、JCRファーマ社は、JR-141に引き続き、中枢神経系の症状を現わす他のライソゾーム病に対して、J-Brain Cargoを適用した治療酵素を順次開発する予定。加えて、本技術は当該分野以外のタンパク質や抗体等の高分子物質から低分子物質までの様々な医薬品への応用も可能であり、これまで治療法の開発が待ち望まれていた疾患の治療薬開発につながる可能性を考慮し、他社へのライセンスも視野に入れている。

JCRファーマ社リリース原文:
http://www.jcrpharm.co.jp/news/info.html?year=2015&id=3444

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