ペランパネルの医師主導型第2相試験がまもなくスタート

国内で孤発性ALSを対象としたペランパネルの安全性および有効性を評価する医師主導型第2相試験が2017年4月から開始される。

実施施設は2月に選定される予定で、全国約10施設での実施が見込まれている。4月以降に各医療機関の研究倫理審査委員会で承認後、承認が得られた施設での試験が開始される。この試験は二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群間比較試験で、主要評価項目としてペランパネルの投与開始時から投与終了時まで48週間でのALSFRS-R(改訂版ALS機能評価スケール)の変化量が設定されている。

この治験ではペランパネル2mgを1日1回より開始し、一週おきに目標維持量4mgまで増量する群、一週おきに目標維持量8mgまで増量する群、及びプラセボ群の3つのグループに分けられ、48週間の投与を受ける。参加基準は40才以上、78才以下の孤発性筋萎縮性側索硬化症の患者で、以下の①に該当し、②に該当しない孤発性筋萎縮性側索硬化症の患者となる。治験への参加は主治医を通して各実施施設へ紹介の形式が予定されている。

①選択基準
[一次登録時]
– 書面による本人または代諾者の同意が得られている.
– 同意取得時に年齢が40歳以上、78歳以下であり,性別は問わない。
– 改訂版El Escorial Airlie House診断基準でALS確実、ALS可能性高し、もしくはALS可能性高し検査陽性
– ALSFRS-Rの3つの呼吸項目の合計が12点以上である.
– 同意取得時に発症より2年以内
– 治療期間中、外来通院が可能

[二次登録時]
一次登録選択基準に加え以下の基準を満たす患者
– 12週間の前観察期間中にALSFRS-Rの変化が-2点から-5点
– 前観察期間開始後にリルゾールを新規導入していない、もしくはリルゾールの用量を変更または中止していない患者
– 前観察期間開始後に新たにエダラボンを導入していない患者
– 試験責任医師により、試験の継続は適当と判断された患者

②除外基準
– 気管切開をしている
– 非侵襲的呼吸補助療法をしている
– %FVCが80%以下
– 球麻痺型
– 認知障害のある患者。重篤な腎疾患、心血管疾患もしくは血液疾患を有する患者
– 肝機能障害を有する患者
– 悪性腫瘍を有する患者
– 妊婦もしくは妊娠の可能性のある女性
– 観察期間前12週以内に他の臨床研究に参加した患者
– ペランパネルを使用したことのあるもしくは使用している患者
– 担当医師がこの試験に不適切と判断した場合

ペランパネルはエーザイ株式会社が開発した抗てんかん薬で、2016年3月に日本での製造販売が承認された。商品名フィコンパ錠。国外では、欧州で2012年7月に、米国で2012年10月に承認されて以降、世界29カ国で承認されている。 2016年6月、東京大学のグループがALSの治療薬としても効果が期待できると発表した。

医療用HAL®、承認後初めて神経・筋難病患者向けに公的な医療保険診療を実施

国立病院機構新潟病院と国立病院機構徳島病院は、難病患者に対する「HAL®医療用下肢タイプ」(以下、「医療用HAL®」)での治療を実施する事を2016年9月2日付けで発表した。医療用HAL®は緩徐進行性の神経・筋疾患(※1)の進行抑制治療を目的とする世界初のロボット治療機器で、今回の治療は昨年11月25日に厚生労働省より医療機器の製造販売承認を取得してから初めての事例となる。

HAL®医療用下肢タイプは、緩徐進行性の神経・筋疾患患者(※1)を対象に 2015年11月に「生体信号反応式運動機能改善装置」という新医療機器として薬事承認された治療ロボットで、装着者が身体を動かそうとした時に発生する脳・神経系由来の微弱な生体電位信号(BES :Bio-Electrical Signal)を皮膚表面から検出する。HAL®医療用下肢タイプは、装着者の状態や関節の部位に応じて「サイバニック随意制御・サイバニック自律制御・サイバニックインピーダンス制御」等の複数の制御モード(※2)を組み合わせることができ、生体電位信号の情報や各種センサ情報を用いて各関節に配置されたパワーユニットを駆動させ、装着者の動作意思に従った動作を実現する。

国立病院機構新潟病院における今回の治療対象は、下腿と足の筋萎縮と感覚低下を起こす「シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)」の10歳代女性や四肢の筋力低下および筋萎縮や球麻痺を起こす 「球脊髄性筋萎縮症(SBMA)」の50歳代男性などの複数の難病患者で、国立病院機構新潟病院が医療用HAL®をレンタルにて提供し、難病治療を実施する。

医療用HAL®の導入に関して、CYBERDYNE社は既に25以上の医療機関から導入の内示を得ており、今後は、各地域に中核病院の拠点化を進めながら、順次拡充していく予定としている。今後は、施設基準等を満たした複数の医療機関において、通常の公的医療保険診療で医療用HAL®が使われることになる。

(※1)対象疾患
以下の緩徐進行性の神経・筋難病疾患患者・脊髄性筋萎縮症(SMA)・球脊髄性筋萎縮症(SBMA)・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)・遠位型ミオパチー・封入体筋炎(IBM)・先天性ミオパチー・筋ジストロフィー
(※2)複数の制御モード(目的に合わせて選択可能)
サイバニック随意制御(CVC)モード :生体電位信号や姿勢等に基づいてアシストを行うモード
サイバニック自律制御(CAC)モード :あらかじめプログラムされた脚の軌道に合わせたアシストを行うモード サイバニックインピーダンス制御(CIC)モード :関節の動きを滑らかにしたり、違和感を軽減したりするモード

CYBERDYNE社プレスリリース

BrainStorm社NurOwnの米国での第2相試験結果速報

BrainStorm Cell Therapeutics社は7月18日、米国で実施していたALSに対するNurOwn® の臨床第2相試験の結果速報を公表した。今回の試験で主要評価項目を達成し、安全性と忍容性が確認された。また複数の副次評価項目についても達成し、治療法としてベネフィットがある事を示した。

NurOwnは患者本人の骨髄より間葉系幹細胞を分離し、神経細胞をダメージから保護する神経栄養因子を分泌するように、独自の技術で培養した細胞である。臨床試験では、ALSによりダメージを受けている神経細胞付近にこのNurOwnを届け、神経細胞死の遅延を狙っている。

試験デザイン
今回の第2相試験はプラセボ対照・ランダム化比較二重盲検で実施され、NurOwnの安全性と有効性の評価を目標に、48名のALS患者が参加して行われた。実施施設は米国内のMassachusetts General Hospital、UMass Medical School、Mayo Clinicの3箇所で、NurOwnを筋肉内及び髄腔内に投与する群が36名、プラセボ12名が設定された。有効性についてはALSFRS-R等、そして進行が緩やかな患者を除いたサブグループでの解析が設定された。

治療反応者のALSFRS-R解析
投与前と比較した投与後の月毎のALSFRS-Rの変化率のパーセンテージ、ポイントの両方について検討された。ほとんど全ての観察時点で、実薬群の反応者割合がプラセボ群に比較して多くなった。例えば12週目時点で、50%以上の変化率改善が見られた「反応者」は、実薬群が40%、プラセボ群が17%となった。なお、過去の研究により、50%改善であれば臨床的に非常に意味があるとされている。
ALSFRS-Rをポイントで評価した場合でもNurOwnの治療によるベネフィットが示されており、投与後4、12、16週の時点では統計的に有意な差を示している。

進行が遅い患者を除いたサブグループ
NurOwnは進行速度を遅延させる効果が考えられており、進行が元々遅い患者はNurOwnによる治療効果を検出しにくいと考えられる。このため進行が遅い患者を除外したサブグループでの解析も行われた。(治療前の観察期間中のALSFRS-Rの傾斜が0.7以上の患者を進行が遅いと定義。) このサブグループでNurOwnの投与を受けた18名中17名において、投与後2週間の時点でALSFRS-Rスコアが不変もしくは改善された。一方、プラセボ群5名で同スコアが不変もしくは改善したのは1名であった(p=0.0027)。 以降4、8、12、16、24週目の時点での実薬とプラセボ群の反応者の対比は以下の通りとなった。
4週目 78% vs. 20%
8週目 44% vs. 20%
12週目 39% vs. 17%
16週目 33% vs. 0%
24週目 22% vs. 0%

バイオマーカー解析
合計35名の患者から投与前後の脳脊髄液のサンプルが収集され、神経栄養因子と炎症因子量が測定された。NurOwnの投与に反応があった患者においては、投与後の血管内皮増殖因子(VEGF)と肝細胞増殖因子(HGF)の値が有意に増加した。また炎症マーカー(MCP-1及びSDF-1)の減少でも統計的に有意差があった。一方、プラセボグループではこれらの変化は観察されなかった。

安全性
NurOwnは安全性に問題なく、忍容性も良好であった。有害事象のほとんどは軽度から中程度のものであった。臨床試験期間中に亡くなった患者はなく、また有害事象が原因での試験中止も発生しなかった。
発生頻度で最も差が出たのは投与部位の痛み、背中の痛み、発熱、頭痛、関節痛である。有害事象は、細胞移植に伴う一時的な反応に収まる傾向にあり、性質上軽度に留まると考えられる。投与後の重度の有害事象はプラセボ群に比べて実薬群での頻度が多く見られた。(実薬群22.2%、プラセボ群8.3%) 重度の有害事象の多くは嚥下障害などALSの進行と関連すると考えられ、NurOwn投与と関連は無いと考えられる。

今回の結果を踏まえ、より長期間での繰り返し投与を行う試験が望まれており、次の治験に繋がると考えられる。

抗てんかん薬フィコンパ、国内でALSに対する医師主導型臨床試験を予定

国際医療福祉大学 臨床医学研究センター 郭伸特任教授と東京大学大学院医学系研究科 赤松恵特任研究員らの研究グループが2016年6月28日オンライン版「Scientific Reports」で発表した研究成果(※1)を受け、ALSに対するフィコンパ(一般名:ペランパネル水和物、エーザイ株式会社)の医師主導型臨床試験の準備が現在進められている。発表された研究内容は、既存の抗てんかん物質であるペランパネルが、ALSモデルマウスにて神経細胞死を抑制したというもの。

治験は孤発性ALS患者限定となり、全国の大学病院を中心に10施設程度で行う予定で、対象患者数は60名程度となる。開始時期については、順調に進んだ場合は2017年初を見込んでいる。治験への参加基準等は、これまで実施されてきたALS患者を対象とした治験での基準等とほぼ同様になる予定である。 続きを読む

吉野内科・神経内科医院でDF-521の探索的臨床研究

千葉県市川市の吉野内科・神経内科医院にてDF-521の筋萎縮性側索硬化症に対する探索的臨床研究の実施がスタートした。研究に参加するALS患者の募集を行っており、募集期間は2016年7月31日までとなっている。

募集詳細: http://www.yoshino-clinic.jp/chiken_01.html

DF-521は東菱薬品工業(販売:日本ケミファ)のデフィブラーゼ点滴静注液(一般名:バトロキソビン製剤)で、1993年に販売開始されたバージャー病や突発性難聴※1及び振動病などを適応とする薬剤である。

国外で脳梗塞急性期治療でのエダラボンとの併用の実績があり、また神経保護効果があることが認められていることから、今回ALSに対してもエダラボンとの相乗効果が期待できるか、また安全性についても問題ないか、探索的な試験が行われる。

デフィブラーゼは選択的に血漿フィブリノゲン濃度を低下させることにより血液の粘度粘度を低下させるなど、 種々な血液の流動性改善作用を示し、それにより末梢循環での血流速度の増加等の末梢循環改善作用を示す。 主な副作用は、注射部位の出血、創部出血等の出血症状 、ALT(GPT) 上昇、AST(GOT)上昇である。

※1突発性難聴は、多くの成因が推測されており、内耳末梢循環障害のみが突発性難聴の原因ではないとされている。したがって、デフィブラーゼは突発性難聴のすべてに投与すべきでなく、病態を観察して各治療法を考慮に入れて、使用を慎重に選択することが望ましい。

幹細胞増殖因子(HGF)の第II相試験開始

東北大学病院で2011年~2014年に行われていた世界初の組換えHGFタンパク質の脊髄腔内投与による第I相試験の結果を受け、東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授は大阪大学大学院医学系研究科神経内科学の望月秀樹教授と共同で、ALSに対するHGFの有効性と安全性を確認する第II相試験を開始した。今回の治験は、東北大学病院で24名、大阪大学医学部付属病院で24名の計48名の患者が参加して行われる。治験に使用するHGFはヒトのHGFを遺伝子組換え技術により製造・製剤化したもので、クリングルファーマ株式会社から提供される。またこの治験では治験薬を脊髄腔内に投与するため、皮下に埋め込むポートとカテーテルの設置が必要となる。期間は2019年8月までを予定している。

HGF(Hepatocyte Growth Factor: 幹細胞増殖因子)は成熟幹細胞の増殖を促進する因子として日本で発見された生理活性タンパク質であるが、その後の研究で脳神経系組織においては、神経栄養因子として神経保護作用や軸索伸展作用を示すことがわかっている。現在ALSの他にも、脊髄損傷に対する治験が慶応義塾大学のグループを中心に進められている。

詳細
東北大学プレスリリース

 

治験参加基準
[仮登録のための条件]
① ALSの診断基準(世界神経学会El Escorial改訂)の「ALS可能性高し 検査陽性」、「ALS可能性高し」または「ALS確実」に該当し、発症後30ヵ月以内の方
② ALSの重症度分類(厚生労働省 特定疾患研究調査 2007.1.1)が1または2の方
③ 年齢が20歳以上、70歳以下の方
④ ALSFRS-Rの全項目が2点以上の方
⑤ %FVC(呼吸機能)が70%以上の方
⑥ Modified Norris Scale球症状尺度の全項目が2点以上の方

[本登録のための条件]
仮登録の条件に加えて、以下の条件に合っていることが必要です。
⑦ 前観察期のALSFRS-Rスコアの変化量が-1~-3点の範囲にある方
⑧ カテーテル・ポート埋め込みの前日までに入院し、その後、治験薬の初回投与の翌日まで継続して入院が可能な方
この治験に関する連絡先
[注]必ず主治医の先生を通してFAXでの問合せをお願いします。
[注]患者・家族から直接の問い合わせや、主治医以外の医療関係者からの問合せ不可。
[注]メール、お電話等によるお問い合わせは受け付け不可
[注]医師主導治験のため、回答がスムーズではない等の問題が第I相の治験の際に発生していたようです。その点ご留意下さい。

専用FAX番号:
東北大学 022-728-3455
大阪大学 06-6879-3579

専用FAX問合せ用紙ダウンロード先:
東北大
大阪大

エーザイが高用量メコバラミン製剤のALSに関する承認申請を取り下げ

エーザイ株式会社は2016年3月22日付でメコバラミン(開発コード:E0302)の高用量製剤について、日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する新薬承認申請を取り下げた。

高容量メコバラミンについては、治験の結果を受けて2015年5月27日に日本でALSに関する新薬承認申請を行なっていたが、その後の医薬品医療機器総合機構との面談の結果、提出した申請パッケージでは不十分であるとの見解が示されたことから、承認申請を取り下げに至った。今後の開発方針については、当局と相談の上、慎重に検討を行う。

 

ソース エーザイ株式会社プレスリリース
http://www.eisai.co.jp/news/news201615.html