BrainStorm社がNurOwn®︎米国でのフェーズ3試験の安全性に関する中間解析結果を発表

BrainStorm Cell Therapeutics社は2018年8月23日付で現在実施されているNurOwn®のフェーズ3試験の安全性に関する中間解析結果を発表した。

これは、試験開始前に計画されていたデータ安全性モニタリング委員会(第三者機関)による解析で、NurOwn®の髄腔内投与を受けた最初の31名の被験者の結果に対して実施された。データ安全性モニタリング委員会は、安全性に関して重大な問題は発生しておらず、フェーズ3試験は予定通りに継続が可能、との見解を示している。

Brainstorm社は現在全米6拠点でNurOwn® を髄腔内へ3回投与するフェーズ3試験を実施中で、200名のALS患者を実薬1:プラセボ1で振り分け、最初の投与から28週間後の改定ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)で有効性を評価する計画である。

現在、このフェーズ3試験の登録被験者数は82名で、そのうち61名が既に投与を開始しており、また、多くの被験者が既に2回の投与を終えている。数名においては、3回全ての投与を完了している。Brainstorm社は2019年1月までの登録被験者数合計が110名程度を予測しており、現在の登録ペースから考えると被験者登録を2019年半ばで終え、その後は有効性評価を経てFDAへ申請する意向だ。

ソース: BrainStorm Cell Therapeutics社プレスリリース

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BrainStorm社がNurOwn®の製造方法に関する特許を近日中に日本でも取得見込み

BrainStorm Cell Therapeutics社は2018年7月5日付で、既に国際特許を取得済みのNurOwn®の製造方法について「神経栄養因子を分泌する間葉系幹細胞の作製方法」として近日中に日本でも特許を取得する見込みになったことを公表した。特許の期限は2033年となる見込み。BrainStorm Cell Therapeutics社は現在米国でNurOwn®の治験(フェーズ3)を行なっている。

この特許は、BDNF(脳由来神経栄養因子)、GDNF(グリア細胞株由来神経栄養因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)を分泌する細胞(NurOwn®を含む)の製造方法に関するものである。

BrainStorm Cell Therapeutics社のCEOであるChaim Lebovitsは次のように述べている。「この特許はNurOwn® 技術開発について商業的に実現可能なものとして取得できたと考えており、国ごとでは初の取得となります。今回の取得により、日本での販売を実現するためのパートナーシップを得る可能性が高まると考えています。また、近い将来に他の国での取得も目指しています。」

 

ソース: BrainStorm Cell Therapeutics社プレスリリース

マシチニブ(AB Science社)の現在の状況について

第3相試験が完了したマシチニブが欧州でのALS治療薬としての承認申請に否定的見解が出されたニュースが話題になっている。

AB Science社は解析結果の速報値を元に、既に欧州医薬品庁に販売承認の申請をしていたが、ヒト用医薬品委員会(CHMP)は該当するデータの妥当性に疑問を投げかけており、承認は難しい状況になっている。

AB Scienceは今回の第3相試験結果の速報として以下の内容を公表している。

– ALSFRS-Rの低下速度※1 を27%減速させた。(有意差、p<0.05) ※1 プライマリエンドポイント
– ALSAQ-40 (生活の質の指数)の低下を29%減少させた。(有意差あり)
– FVC(努力性肺活量)の低下を22%減少させた。(有意差あり)
– 疾患の進行を25%遅延させた。(survival-to-event分析)(有意差あり)
– 安全性については許容範囲であった。

しかしながら、2018年4月にヒト用医薬品委員会(CHMP)から下記のような指摘を受けている。

– ヒト用医薬品委員会(CHMP)が今回の治験実施施設のうち主要な2箇所についてGCP(医薬品の臨床試験に関する基準)に基づいた査察を実施した結果、データの信頼性が十分ではないと考えている。

– ヒト用医薬品委員会(CHMP)はAB Science社が「通常」進行速度の患者(この治験においては全体の85%)と、「速い」進行速度の患者(全体の15%)とに分けていることについて、臨床的な意義を見出せず、「通常」進行速度の患者の群でのエンドポイントの達成に疑問を持っている。

– ヒト用医薬品委員会(CHMP)は満期前に試験を中止した患者のLOCF手法(最後に測定された値で評価時点の値を補完する手法)を用いたALSFRSスコアの解析は、結果の分析においてバイアスが入っている可能性があると考える。

AB Science社ではこれらの指摘事項に対応するため、再審査手続きの一環として、各項目の更なる分析を実施するとしており、この手続き上でヒト用医薬品委員会(CHMP)の2回目の意見が2018年7月に出される予定であったが、2018年5月にAB Science社が再審査ではなく最終版データでの再申請を検討すると発表している。

 

マシチニブとは
肥満細胞とマクロファージを標的とする選択的経口チロシンキナーゼ阻害剤。動物の肥満細胞腫に対する抗腫瘍薬としての実績がある。AB Scienceでは、麻痺後のSOD1G93Aラットがマシチニブの投与により生存期間が著しく延長したことから、マシチニブがALSの中枢神経系に保護的効果を持つと考えている

医師主導での高用量E0302の筋萎縮性側索硬化症に対する第3相試験(2017年11月)

※更新を一時停止していたため、2017年11月のニュースです。既にご存知の方も多いと思いますが、念のため掲載します。

医師主導治験として高用量E0302(メコバラミン)の筋萎縮性側索硬化症に対する第3相試験が2017年11月より開始される。先行の第2/3相の試験では実薬群はプラセボ群に比較して、イベント発生(呼吸器の装着または死亡)までの期間延長傾向とALSFRS-Rスコア低下抑制傾向がみられたが、統計学的有意差は確認されなかった。しかしALS発症後1年以内の登録者に限った部分的な解析では、イベント発生までの期間を大幅に延長することを確認した。そのため、今回の第3相試験ではALS発症後1年以内の患者を対象として実施する。

治験の詳細について (JETALS治験調整事務局 治験サイト)
https://als-mecobalamin.org/%e7%ad%8b%e8%90%8e%e7%b8%ae%e6%80%a7%e5%81%b4%e7%b4%a2%e7%a1%ac%e5%8c%96%e7%97%87-als%e6%b2%bb%e9%a8%93/

ペランパネルの医師主導型第2相試験がまもなくスタート

国内で孤発性ALSを対象としたペランパネルの安全性および有効性を評価する医師主導型第2相試験が2017年4月から開始される。

実施施設は2月に選定される予定で、全国約10施設での実施が見込まれている。4月以降に各医療機関の研究倫理審査委員会で承認後、承認が得られた施設での試験が開始される。この試験は二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群間比較試験で、主要評価項目としてペランパネルの投与開始時から投与終了時まで48週間でのALSFRS-R(改訂版ALS機能評価スケール)の変化量が設定されている。

この治験ではペランパネル2mgを1日1回より開始し、一週おきに目標維持量4mgまで増量する群、一週おきに目標維持量8mgまで増量する群、及びプラセボ群の3つのグループに分けられ、48週間の投与を受ける。参加基準は40才以上、78才以下の孤発性筋萎縮性側索硬化症の患者で、以下の①に該当し、②に該当しない孤発性筋萎縮性側索硬化症の患者となる。治験への参加は主治医を通して各実施施設へ紹介の形式が予定されている。

①選択基準
[一次登録時]
– 書面による本人または代諾者の同意が得られている.
– 同意取得時に年齢が40歳以上、78歳以下であり,性別は問わない。
– 改訂版El Escorial Airlie House診断基準でALS確実、ALS可能性高し、もしくはALS可能性高し検査陽性
– ALSFRS-Rの3つの呼吸項目の合計が12点以上である.
– 同意取得時に発症より2年以内
– 治療期間中、外来通院が可能

[二次登録時]
一次登録選択基準に加え以下の基準を満たす患者
– 12週間の前観察期間中にALSFRS-Rの変化が-2点から-5点
– 前観察期間開始後にリルゾールを新規導入していない、もしくはリルゾールの用量を変更または中止していない患者
– 前観察期間開始後に新たにエダラボンを導入していない患者
– 試験責任医師により、試験の継続は適当と判断された患者

②除外基準
– 気管切開をしている
– 非侵襲的呼吸補助療法をしている
– %FVCが80%以下
– 球麻痺型
– 認知障害のある患者。重篤な腎疾患、心血管疾患もしくは血液疾患を有する患者
– 肝機能障害を有する患者
– 悪性腫瘍を有する患者
– 妊婦もしくは妊娠の可能性のある女性
– 観察期間前12週以内に他の臨床研究に参加した患者
– ペランパネルを使用したことのあるもしくは使用している患者
– 担当医師がこの試験に不適切と判断した場合

ペランパネルはエーザイ株式会社が開発した抗てんかん薬で、2016年3月に日本での製造販売が承認された。商品名フィコンパ錠。国外では、欧州で2012年7月に、米国で2012年10月に承認されて以降、世界29カ国で承認されている。 2016年6月、東京大学のグループがALSの治療薬としても効果が期待できると発表した。

医療用HAL®、承認後初めて神経・筋難病患者向けに公的な医療保険診療を実施

国立病院機構新潟病院と国立病院機構徳島病院は、難病患者に対する「HAL®医療用下肢タイプ」(以下、「医療用HAL®」)での治療を実施する事を2016年9月2日付けで発表した。医療用HAL®は緩徐進行性の神経・筋疾患(※1)の進行抑制治療を目的とする世界初のロボット治療機器で、今回の治療は昨年11月25日に厚生労働省より医療機器の製造販売承認を取得してから初めての事例となる。

HAL®医療用下肢タイプは、緩徐進行性の神経・筋疾患患者(※1)を対象に 2015年11月に「生体信号反応式運動機能改善装置」という新医療機器として薬事承認された治療ロボットで、装着者が身体を動かそうとした時に発生する脳・神経系由来の微弱な生体電位信号(BES :Bio-Electrical Signal)を皮膚表面から検出する。HAL®医療用下肢タイプは、装着者の状態や関節の部位に応じて「サイバニック随意制御・サイバニック自律制御・サイバニックインピーダンス制御」等の複数の制御モード(※2)を組み合わせることができ、生体電位信号の情報や各種センサ情報を用いて各関節に配置されたパワーユニットを駆動させ、装着者の動作意思に従った動作を実現する。

国立病院機構新潟病院における今回の治療対象は、下腿と足の筋萎縮と感覚低下を起こす「シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)」の10歳代女性や四肢の筋力低下および筋萎縮や球麻痺を起こす 「球脊髄性筋萎縮症(SBMA)」の50歳代男性などの複数の難病患者で、国立病院機構新潟病院が医療用HAL®をレンタルにて提供し、難病治療を実施する。

医療用HAL®の導入に関して、CYBERDYNE社は既に25以上の医療機関から導入の内示を得ており、今後は、各地域に中核病院の拠点化を進めながら、順次拡充していく予定としている。今後は、施設基準等を満たした複数の医療機関において、通常の公的医療保険診療で医療用HAL®が使われることになる。

(※1)対象疾患
以下の緩徐進行性の神経・筋難病疾患患者・脊髄性筋萎縮症(SMA)・球脊髄性筋萎縮症(SBMA)・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)・遠位型ミオパチー・封入体筋炎(IBM)・先天性ミオパチー・筋ジストロフィー
(※2)複数の制御モード(目的に合わせて選択可能)
サイバニック随意制御(CVC)モード :生体電位信号や姿勢等に基づいてアシストを行うモード
サイバニック自律制御(CAC)モード :あらかじめプログラムされた脚の軌道に合わせたアシストを行うモード サイバニックインピーダンス制御(CIC)モード :関節の動きを滑らかにしたり、違和感を軽減したりするモード

CYBERDYNE社プレスリリース

BrainStorm社NurOwnの米国での第2相試験結果速報

BrainStorm Cell Therapeutics社は7月18日、米国で実施していたALSに対するNurOwn® の臨床第2相試験の結果速報を公表した。今回の試験で主要評価項目を達成し、安全性と忍容性が確認された。また複数の副次評価項目についても達成し、治療法としてベネフィットがある事を示した。

NurOwnは患者本人の骨髄より間葉系幹細胞を分離し、神経細胞をダメージから保護する神経栄養因子を分泌するように、独自の技術で培養した細胞である。臨床試験では、ALSによりダメージを受けている神経細胞付近にこのNurOwnを届け、神経細胞死の遅延を狙っている。

試験デザイン
今回の第2相試験はプラセボ対照・ランダム化比較二重盲検で実施され、NurOwnの安全性と有効性の評価を目標に、48名のALS患者が参加して行われた。実施施設は米国内のMassachusetts General Hospital、UMass Medical School、Mayo Clinicの3箇所で、NurOwnを筋肉内及び髄腔内に投与する群が36名、プラセボ12名が設定された。有効性についてはALSFRS-R等、そして進行が緩やかな患者を除いたサブグループでの解析が設定された。

治療反応者のALSFRS-R解析
投与前と比較した投与後の月毎のALSFRS-Rの変化率のパーセンテージ、ポイントの両方について検討された。ほとんど全ての観察時点で、実薬群の反応者割合がプラセボ群に比較して多くなった。例えば12週目時点で、50%以上の変化率改善が見られた「反応者」は、実薬群が40%、プラセボ群が17%となった。なお、過去の研究により、50%改善であれば臨床的に非常に意味があるとされている。
ALSFRS-Rをポイントで評価した場合でもNurOwnの治療によるベネフィットが示されており、投与後4、12、16週の時点では統計的に有意な差を示している。

進行が遅い患者を除いたサブグループ
NurOwnは進行速度を遅延させる効果が考えられており、進行が元々遅い患者はNurOwnによる治療効果を検出しにくいと考えられる。このため進行が遅い患者を除外したサブグループでの解析も行われた。(治療前の観察期間中のALSFRS-Rの傾斜が0.7以上の患者を進行が遅いと定義。) このサブグループでNurOwnの投与を受けた18名中17名において、投与後2週間の時点でALSFRS-Rスコアが不変もしくは改善された。一方、プラセボ群5名で同スコアが不変もしくは改善したのは1名であった(p=0.0027)。 以降4、8、12、16、24週目の時点での実薬とプラセボ群の反応者の対比は以下の通りとなった。
4週目 78% vs. 20%
8週目 44% vs. 20%
12週目 39% vs. 17%
16週目 33% vs. 0%
24週目 22% vs. 0%

バイオマーカー解析
合計35名の患者から投与前後の脳脊髄液のサンプルが収集され、神経栄養因子と炎症因子量が測定された。NurOwnの投与に反応があった患者においては、投与後の血管内皮増殖因子(VEGF)と肝細胞増殖因子(HGF)の値が有意に増加した。また炎症マーカー(MCP-1及びSDF-1)の減少でも統計的に有意差があった。一方、プラセボグループではこれらの変化は観察されなかった。

安全性
NurOwnは安全性に問題なく、忍容性も良好であった。有害事象のほとんどは軽度から中程度のものであった。臨床試験期間中に亡くなった患者はなく、また有害事象が原因での試験中止も発生しなかった。
発生頻度で最も差が出たのは投与部位の痛み、背中の痛み、発熱、頭痛、関節痛である。有害事象は、細胞移植に伴う一時的な反応に収まる傾向にあり、性質上軽度に留まると考えられる。投与後の重度の有害事象はプラセボ群に比べて実薬群での頻度が多く見られた。(実薬群22.2%、プラセボ群8.3%) 重度の有害事象の多くは嚥下障害などALSの進行と関連すると考えられ、NurOwn投与と関連は無いと考えられる。

今回の結果を踏まえ、より長期間での繰り返し投与を行う試験が望まれており、次の治験に繋がると考えられる。